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『グレート・ギャツビー』 -スコット・フィッツジェラルド 村上春樹訳 [小説]

グレート・ギャツビー

グレート・ギャツビー

  • 作者: 村上春樹, スコット フィッツジェラルド
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 単行本

「僕は60歳になったら『グレートギャツビー』の翻訳を始める」
こう公言し、また訳者が人生で巡り会った最も大切な小説を
「村上春樹だから」
と、手に取った方が多いのではないかと思います。
はい。
斯くいう私もその一人でございます。
 
村上春樹 という作家。
実は自分にとって鬼門なんです。
最大の難関、そして憧れ。
以前、 『羊をめぐる冒険』 の記事でも書いたとおり、読めば読むほど分からなくなるってゆーか。
少し近づけたかと思って、意気揚々と次の扉を開けると、そこは絶対長い廊下だろうと想像していたのに、当然高い塔のてっぺんに連れてこられてて、敢え無く落下するしかない。
そういう作家なんです。(何がいいたいのか全く分かりませんねw)

ドアの向こうに羊博士が登場した瞬間。
部屋の石がしゃべりだした瞬間。
幾度となく取り残された感覚を味わったことか。
よーは。
わからないんですよw  
自分の理解の範疇を超えていってる。
同じようにぐるぐると歪むような世界を展開するものでも、村上龍はまだ分かる。理解できる。
もし、村上春樹が しっくりと落ちてきた 瞬間を味わうことができたら・・・。
今までの文学に対する世界観が変わるんじゃないか?
と、思えるほど村上春樹文学は、私に憧憬の念を抱かせるのです。
 
この本の紹介広告を見たとき、
「これだ!」
と、思いました。
翻訳なら、羊博士が出てくる心配はない(浅はか)
そして、訳者がこれほどまでに思い入れの強い作品なら、必ず文体の中に
「村上春樹」が顔を出すに違いない!
という、かなり阿漕な考えから手に取ったのでしたw

ですので、『グレート・ギャツビー』という作品自体を深く掘り下げるような読み方はしていません。
村上春樹の匂いを探るように、あせらずゆっくりと読みました。

まず、手にとってこの微妙な手触り(?)の微妙なサイズの本を玩ぶように開きました。
計算されたような余白にも期待が膨らみます。
集中して読んでいるとその世界に沈み込んでいけるような、
しかしただぼんやりと字面を追ってしまうとぷいっと逃げられてしまうような、
村上春樹ならではの文体で物語は綴られていきます。

村上春樹の作品は、場面展開や、物語のテーマや、作者の語らんとしていることはつかみきれないのですが、文章表現は好きなんですよ。
さらりとして、難しい言葉を使わない。
それでいて、雰囲気があって、度々はっとさせられるような魅力的な表現がある。
お菓子に例えるなら、かっぱえびせん?
いつ、どんなところで口にしても、
「あっ、かっぱえびせんだ」って分かるでしょw
なんとか味って新製品が出ても、形や歯ざわりが変わらない。
食べれば、やっぱり かっぱえびせん!って感じだからです。

『グレート・ギャツビー』も口に含んだ瞬間、村上春樹=かっぱえびせん でした。
訳者があとがきで書いているように、登場人物たちはこの本を手に取った人の隣で生きていなければならない。
時代設定は、80年も前のアメリカであるにもかかわらず、私達は訪れたことのないロングアイランドで、確かに美しいサンセットを見、ギャツビー家の享楽的なパーティーに参加した。
この点では、訳者のもくろみは大いに成功していると思います。
 
意外な展開の物語を読み終えた後、どうして村上氏はこの作品にこうまで惹かれ続けているのかと考えてしまいました。
多分、彼は物語の筋だけでなく文章表現を含んだ全体を、音律のように捉えて作品を聴いているのではないかと感じました。
これは、原文を(訳すというレベルではなく)読めないと、分からないことなのでしょう。(私には残りの半生を費やしても無理ですw)
 
こんな読み方をすると、
「ちょっと待ってください。『グレート・ギャツビー』をそんな風に読まないで下さい」
と言われてしまうくらい不届き千万な使い方をしましたが、
村上春樹文学が私に歩み寄りを見せ、少しだけ馴染んできました。
いけるかも!!
羊博士シリーズか、『海辺のカフカ』か。
もう一度読んでみよう!
 
最後に。
「『グレート・ギャツビー』って読みましたけど、そんなにすごい作品なんですか?」
私にとっては、彼が訳したものであれ、そうでないものであれ、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』=『ライ麦畑でつかまえて』のほうが断然魅力的な作品でした。
怒られちゃいそうですねww

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