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ちょっとコーヒーブレイク?絵巻について -『よみがえる源氏物語絵巻』 [日記]

平安貴族のお姫様が愛した絵巻物。
美しい挿絵と物語が綴られた、さながら豪華な絵本というイメージがありました。
姫君のつれづれな手慰みになったんだろうな・・・と。

昨年の春ごろから絵巻に触れる機会があり、認識を変えました。
一番惹かれたのは、巻いては広げる干渉方法でした。
巻物になってるんですから、部屋の端からだーーーーーっと広げて見るんじゃないことくらい分かってたはずなんですけど。改めて驚いたというか、感動したというか。
30cm程度に広げた画面から、巻いて→広げて→巻いて→広げて・・・という動作を繰り返して鑑賞することで右から左へと場面が展開し、時間の経過や空間の移動などを表現できるということなのでした。

へぇ~~
それって、アニメと一緒やん!
これかぁ、日本アニメーションの原点はっ!!
と、無性に感動したんですよ。(相変わらず変なヤツです、はい。)
美術史に詳しいわけではありませんが、こんな鑑賞方法をとったのはきっと日本だけですよね。
中国にも巻物はありましたが、あちらはパノラマ的に使ったとか。
絵と文章である詞書(ことばがき)が交互に貼り付けられていたのが、そのうち時代が下ると画中詞(がちゅうし)といって、絵画のなかに科白が入るようになります。
これって、コミックやん!!www
今まで映像化はコミックからアニメという流れだとばかり思っていたのですが、源流をたどるとなんとアニメからコミックだったんですね。
へぇ~
っと、この時点ですっかり絵巻物に魅了されてました。

今年の初めに、NHKスペシャル「よみがえる源氏物語絵巻」という番組を見ました。
国宝源氏物語絵巻は、現存する最古の絵巻です。
詞書に使用されている料紙(紙)の質といい、描かれた絵画の美麗さといい、一姫君が手慰みで所有していたとは思えません。数人の絵師・数人の能書家が作成してることからも、かなり大きなプロジェクトだったんでしょうね・・。半端じゃないお金がかかっているので帝クラス(?)のパトロンがついていたんだろうなぁ・・と想像しました。
七十図から百図程度あったと思われる絵も、現在徳川美術館と五島美術館に残る十九図(若菜の発見で二十図ともいわれていますが)以外は散逸してしまっています。

・・・ウンチクりだすと止まらなくなってくる orz
で、十九図全てを復元模写するプロジェクトを記録した番組が「よみがえる源氏物語絵巻」でした。
化学分析を元に、剥落で失われてしまった色彩を解析し肉眼では見えなかった文様を表す。
画家はそれぞれに遠い平安の絵師の心に近づこうと筆を走らせ・・・
復元された絵は
「をぉおお~~」
これが、描かれた当時の色彩なのかと感嘆する鮮やかさ。
現代の私たちは900年の時を経た歴史の重みを感じる「本物」と当時の人々が目にしたであろう復元を一緒に見ることができる。
「とても幸せなことですね」
と笑う徳川美術館館長に、思わず えぇほんとに と返事を返してしまいした。

よみがえる源氏物語絵巻―全巻復元に挑む

よみがえる源氏物語絵巻―全巻復元に挑む

  • 作者: NHK名古屋「よみがえる源氏物語絵巻」取材班
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2006/02
  • メディア: 大型本

復元された全図が載っている本も出版されています。

でもって、春の一日。友人と京都へ遊びに出かけた私は構内の大きなポスターの前で釘付けになります。
京都国立博物館で開催される「大絵巻展」
くるわ、くるわ。有名どころ全てを網羅したような、正に「大絵巻」です。
教科書で一度は見たことがある「鳥獣戯画」・国宝でもある「信貴山縁起絵巻」・「紫式部日記絵巻」に「一遍聖絵」。そして「国宝源氏物語絵巻」
こりゃ、行くしかないだろ!

GWを利用して再び京都へと赴いたのですが、博物館の中で並んだのも、展示物の前で
「立ち止まらないでお進みください。」(つーか立ち止まって見ずになにが見られる?)と言われたのも初めてと言う混雑ぶり。
係員が「最後尾はこちらでーす」と叫んでいる館内。
話をするのもはばかれるようなしーんとした空気の美術館や博物館イメージの強い自分には、
「ここはナンですか?ディズニーランドですかぁ?ユニバーサルスタジオですか?アトラクションはどこですかぁ?」
って感じでしたw

もともと縁起ものの荒唐無稽なお話の絵巻や、マンガチックな画中詞の絵巻が好きな自分は、「国宝源氏物語」や「鳥獣戯画」意外にも堪能するほど絵巻が見られて大満足でした。

ここで私の絵巻ワールドも終わるのかと思っていましたが、第3波がやってきました。
先週聴講した絵巻と物語の講義です。
源氏物語と源氏物語絵巻の詞書を検証するという作業を行いました。
すると、どうでしょう。
今までスタティックだとばかり思っていた1枚の絵の中に、時間の経過や物語の進行を見出すことができました。
絵のなかで、視点が動くように描かれているのです。

ゆるゆると巻物を広げるとまず飛び込んでくる貴公子の姿。
その公達の視線を追うと、件の姫君達の声が聞こえる。
碁での賭けの対象となる坪庭の桜。
咲き誇る桜と地面を埋める花びらがの先には、想い人である姫がお召しになる桜襲の細長。
御簾からわずかに覗いたその指先に少将は釘付けになるのでした。(竹河二)
・・・っと。
やっぱり、巻物ならではなんだと思います。
絵師は、絵が右からゆっくりと開かれていくことを十分意識して構図しています。
1枚で完結される絵画にはない、物語の流れや人物の心理描写。時間や空間の移動など。
よくぞ巻いて使ってくれた!!って感じなんですよw

京都の展覧会は残念ながら終わってしまいました。
もう一度ゆっくり見に行きたかったな・・・。
4.5年に一度五島美術館と徳川美術館交代で「国宝源氏物語絵巻」全図を公開します。
和歌山の道成寺では寺の縁起を「道成寺縁起絵巻(複製)」を使って絵とき説法を聞かせてもらえます。
普段目にする機会のないものですが、動画の原点(日本のアニメーションの原点だと考えてます)を味わってみられてはいかがでしょうか?

(はぁ・・・さんざんウンチクってすっきりしたw)


(参考)
よみがえる源氏物語絵巻(徳川美術館)注:展覧会は終了しています
徳川美術館
五島美術館
京都国立博物館(大絵巻展は終了しています)
道成寺


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